
タイで業務アプリケーションを開発しているシステムインテグレーターのCSIタイランド(以下CSI)と株式会社クニエ(以下クニエ)は5月17日、バンコク市内にて「タイにおけるスマートロジスティクス推進セミナー」を開催しました。
本セミナーでは、クニエの講師により、タイにおけるロジスティクスの現状、IoT、AIを取り入れたスマートロジスティクスのアジアにおける展望が示されました。そして、最後にCSI営業責任者の小川良儀氏から、タイにおける倉庫管理ソリューションの導入事例が紹介されました。
【株式会社クニエ(QUNIE CORPORATION)】
クニエは、NTTグループのビジネスコンサルティングファーム。世界で戦う日系企業をはじめ、企業と社会の発展に貢献することを目指しています。2009年設立。タイ事業責任者は岡部修大氏。
最初にクニエタイ事業責任者の岡部氏から、タイのロジスティクスの現状が語られました。
タイでは自動車の生産台数、販売台数、輸出台数は停滞しているものの、保守用部品ニーズの高まりにより倉庫需要が増大しています。他方、タイのe-コマース市場は拡大が続いています。2017年で30億ドルほどだった売上高が2022年には倍の60億ドルに拡大する見通しで、この分野もロジスティクスの需要が増大する見込みです。と説明。
■問題点
さらに、こうした中、倉庫の大型化・製品や事業の多様化による倉庫内オペレーションの複雑化、さらに人件費の高騰という課題が顕在化しており、これらの課題を解決するための業務改革のアプローチは以下の手順で進めるべきと提言しました。
Step1. 業務分析フェーズ
Step2. 新業務設計フェーズ
Step3. 導入フェーズ(新業務移行支援・ITシステム構築)
Step4. 定着化フェーズ(新業務運用の定着・習熟度向上支援)
続いてクニエのロジスティクスのグループリーダー前田氏が、アジアにおける「ロジスティクス4.0」の展開についてレクチャーしました。
クニエでは、産業革命の蒸気機関時代を「ロジスティクス1.0」、20世紀の電気機械時代を「2.0」、ITによる生産性革命を「3.0」、そしてAI・IoT化されたシステムの時代を「ロジスティクス 4.0」として提唱しています。この「ロジスティクス4.0」が「スマートロジスティクス」です。
物流はかつて労働集約型の業務でしたが、ロジスティクス 4.0では労働力への依存度は低くなり、代わって知性集約型の業務へ移行していきます。そこではネットワーク化された現場からデータが収集され、クラウドベースに集積されたビッグデータを元に、AIが「いつ、どこで、どれくらいの数量、需要があるか」を予想。さらにそこから必要な設備と人員を予想し、最適化されたオペレーションを提示します。同時にIoT化、自動化された運搬システムにより、省人化と時間短縮も行います。
タイの現状は「ロジスティクス3.0に達する一歩手前」です。しかし新興国では、最先端技術の需要と普及が一気に進む「かえる跳び現象」がしばしば見られます。法規制のゆるさや政府の強力な牽引などから生じる現象です。
そうした背景を考慮すると、タイでもロジスティクス、特に倉庫における進化が更に進む可能性は大いにあります。現場のノウハウを標準化し、AIとIoTとビッグデータを土台にしたシステム上で運用可能になれば、タイもロジスティクス4.0の時代になると提言しました。
クニエのロジスティクスグループの篠田氏からは、タイに適した倉庫オペレーション改革の構想が語られました。
篠田氏はまず、在庫管理の不徹底、低い作業品質のサービス、不明瞭なコスト、全ての点でタイのロジスティクスは期待するレベルに達していないと指摘。
この状況からロジスティクス 3.Xに追いつき、4.0まで成長するには、まず基本レベルの倉庫サービスを確立する必要があると提言。
基本レベルとは「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の5S、「定置・定品・定量」の3定、そして「人・物・情報がよどみなく流れる」整流化といったような、一般的に用いられている指標が達成されたレベルのことです。
この「当たり前レベル」のサービス体制を確立した上で、ロジスティクス3.Xに追いつくために、下記の流れで改革を進めるべきと結論づけました。
・業務プロセス改革はWMSの標準プロセスにできるだけ適合させる。
・業務とWMSを熟知した人材の主導でWMSを導入する。
・定期的に業務プロセス改善・WMS導入の効果を確認し、継続的なモニタリングと対応で定着化させる。
最後にCSIの営業責任者・小川氏から同社の倉庫管理ソリューションの導入事例の紹介がありました。
【ソリューション内容】
受発注、会計システムへのデータ連携を可能とした倉庫管理システムの導入。
【効果】
1) ハンディターミナルを使って倉庫業務を行ったことにより、紙使用減、人的ミス減
2) 既存の簡易ERP用のフォーマットで出力したファイルをシステムに移し込むことで入力時間短縮
3) 会社の定型フォーマットでサマリーレポートシステムから出力可能になり、レポート作成時間短縮
4) 倉庫管理システムで月次棚卸しを行なったところ、作業時間80%減
【ソリューション内容】
・受入、配送プランの自動計算
・製品の検品モジュール
・パッキングプランの自動計算
・パッキングプロセス管理
・会計システムへのデータ連携
【効果】
1) パーツ受入計画自動計算・検査・ピッキング計画・梱包計画と納品時間が短縮
2) 倉庫での各運用と梱包業務にハンディターミナル使用により人的ミス減、紙使用減
3) 既存の簡易ERP用のフォーマットで出力したファイルをシステムに移し込むことで入力時間短縮
4) パーツトレーサビリティーの時間短縮
この他、ツールを扱う専門商社の日系企業C、エアコン製造業の日系企業D、またモバイルを活用したTMS(Transportation Management System)などの事例も紹介されました。
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