製造業の現場において、ねじのサビは製品の品質や安全性に影響を与える深刻な課題です。しかし、その原因を理解し、適切な対策を講じることで、製品の信頼性を高めて予期せぬトラブルを未然に防ぐことができます。
今回は、ねじがさびる根本原因から、現場で役立つ予防策、さらに固着した際の取り外し方法までエンジニアの皆さんがすぐに活用できる実践的なノウハウを解説します。
ねじの錆は、金属が空気中の酸素や水と反応して酸化することで発生します。特に、以下の3つの条件が揃うと錆は急速に進行します。
1: 湿気と水分が付着する
湿度の高い場所(目安:湿度65%以上)やねじに水が付着すると、錆が発生しやすくなります。屋外はもちろん、雨の日のガレージや密閉されていない工具箱の中も注意が必要です。水に溶けた酸素が鉄と反応し、おなじみの「赤さび」を作ります。
2 : 塩分や異種金属との接触
• 塩分:海岸近くなど塩分の多い環境では、塩が空気中の水分を引き寄せるため、ねじの表面が常に湿った状態になり、錆が進行しやすくなります。
• 異種金属接触(ガルバニック腐食):アルミと鉄のように電位差のある金属が接触すると腐食します。これは「異種金属接触腐食」や「ガルバニック腐食」と呼ばれます。
3 : 埃などの汚染物質の付着
排ガスに含まれる硫黄や塩化物、さらに埃や汚れ、塩素系洗剤なども錆を促進する要因です。ねじを扱う際は、清潔な環境を保つことも大切です。
ねじのサビを防ぐには、いくつかの予防策を組み合わせることが効果的です。現場でも簡単に実践できる方法を3つご紹介します。
1. 防錆塗料・潤滑剤を使う
ねじの表面に保護膜を作り、水分や酸素の接触を防ぎます。
潤滑剤や防錆油を使用し、広範囲には液体タイプ、自転車のチェーンやボルトなど細かい部分にはスプレータイプが便利です。
2. 保管方法を見直す
埃や水分との付着を防ぐためにも、以下のような保管方法がオススメです。
• 乾燥した屋内で保管する:湿気を避け、換気の良い場所で保管することが基本です。
• 乾燥剤や防錆資材を活用する:工具箱の中に乾燥剤(シリカゲル)や古新聞を入れるだけでも効果があります。
• 密閉容器で保管する:埃や汚れからねじを守るため、密閉できる容器や袋に入れて保管しましょう。
3. 錆びにくいメッキ加工のネジを選ぶ
最初から錆に強いねじを選ぶのも効果的です。
• 高耐食性メッキ:過酷な環境でも高い防錆性能を発揮します。
• 安価で汎用性の高いメッキ:三価ホワイトメッキ(三価クロメート)は環境に優しく、一般的には電気亜鉛メッキが広く使われています。
予防しても、ねじが錆びて固着してしまうことがあります。そんな時に役立つ方法を紹介します。
1. ハンマーと潤滑剤の合わせ技を使う
• ネジの頭をハンマーで数回叩き、固着を緩めます。
• 潤滑剤を吹きつけ、10分ほど放置して浸透させます。
• 再度叩いてから、ゆっくりとねじを緩めます。凍結&潤滑系スプレーは、金属を冷却して収縮させ、錆にひびを入れることで浸透を助けます。
2. ねじ抜き工具を使う
• ドリルとエキストラクター:ねじの頭にドリルで穴を開け、逆ネジ状の「エキストラクター」を差し込み回して引き抜きます。
3. 溝を作る
ねじの頭がなめてしまった場合、新しい溝を作り、マイナスドライバーで回す方法です。
4. 熱を加える
ねじを軽く加熱すると金属が膨張し、固着部分の錆が緩みます。ただし加熱しすぎるとねじや周囲が変形・焦げる恐れがあるため、注意して行いましょう。
ねじの錆は、原因を理解し、適切な予防策を講じることで大幅に防ぐことができます。今回紹介した予防法や取り外し方法を参考に、大切な商品や工具を錆から守りましょう。
「どの方法が適しているか分からない」「もっと詳しく知りたい」「適切に処理しているのに錆びる」といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。皆さんのモノづくりがより快適で安全なものになるよう、阪神ネジが全力でサポートいたします。