モノづくりにおいて、重要な役割を果たす高強度ボルト。
その種類やメリット・デメリット、そして選定時に特に注意すべき点をご紹介します。
高強度ボルトとは、その名の通り、一般的なボルトよりも高い強度を持つボルトの総称です。市販されているボルトの強度区分は「4.8」から「12.9」まであり、数字が大きいほど強度が高くなります。たとえば「4.8」は引張強さ400 N/mm²、「12.9」は1,200 N/mm²を示します。
• 締結力の向上と緩み防止
高い締め付け力とねじ精度により、緩みを防ぎます。
• 設計のコンパクト化・軽量化
強度が高いため、同等の締結力を得るために必要なボルトサイズを小さくでき、製品全体のコンパクト化や軽量化に貢献します。
• 高い信頼性と安全性
大きな荷重や衝撃に耐え、接続部の気密性や剛性を向上させます。
高強度ボルトの中でも、「12.9」と「14.9」は特に高い強度を持ちます。
• 強度区分12.9ボルト
非常に高い強度を持ち、航空機・自動車競技・工業機械・建築・高速鉄道・エンジニアリングプロジェクト・軍事用途など、安全性が不可欠な分野で使用されます。材質はSCM材(クロムモリブデン鋼)が一般的で、六角穴付き形状が多く、一部サイズでは12.9の六角ボルトもあります。
• 14.9超強度六角穴付きボルト(キャップボルト)
日本の高い技術力を持つメーカーが共同開発した「超高強度ボルト」です。引張強度1,400 N/mm²を誇り、頭部が小さいため、狭い場所での締結やコンパクトな設計が可能です。
従来、M20を超える太径の六角ボルトや六角穴付きボルト(キャップボルト)は、ほとんどが強度区分10.9でした。そのため、強度区分12.9の太径ボルトは特注品となり、コスト増の要因となっていました。
しかし、近年ではM22/M24/M30などの呼び径で、強度区分12.9の商品を製造するメーカーが増えています。太径ボルトに10.9までの市販品が多い理由は、大径になるほど高強度を実現する製造(熱処理や冷間加工)が難しく、コストが高くなることに加え、後加工でメッキを施す場合、水素脆化のリスク管理がより重要になるためです。
高強度ボルト選定時の重要な注意点の一つは、電気めっきの可否です。強度区分12.9以上のボルトには、基本的に電気めっきを施すべきではありません。
水素脆化とは?
鋼材が製造工程や表面処理中に水素を吸収することで、靭性(ねばり強さ)が低下し、もろくなる現象です。特に高強度鋼(ハイテン)で発生しやすいと報告されています。
遅れ破壊とは?
水素脆化が原因で、ボルトが一定の引張荷重を受けていても前兆なく突然破断する現象です。締め付け時には問題がなくても、数時間~数日後に破断する可能性があるため非常に危険です。
ボルトの破損原因は強度不足や締め付け過多など様々ですが、高強度ボルトを適切に選定・使用することで、製品の小型化・軽量化と高い安全性を実現できます。ただし、水素脆化による遅れ破壊のリスクも潜んでいます。
高強度ボルトの採用に不安がある場合や、より高強度のボルトを必要としている場合は、ぜひ阪神ネジ(タイランド)にお問い合わせください。用途と環境に最適な締結ソリューションをご提案し、安心・安全なものづくりをサポートいたします。