本記事では、タイにおいて工場やオフィスの新設・増改築の他、鷹匠による鳥害対策サービスを手掛けるカズサタイランドの顧客事例として、工場に長年住みついた鳩の鷹匠による集中駆除の事例を紹介する。
ヤマトフィルター(タイランド)は、エアクリーナーや各種フィルターを製造する日系企業で、タイで法人でも、プラスチックの射出成型機、振動溶着機、赤外線溶着機などの特殊設備を揃え、日本と同水準の品質で製品を供給している。二輪車メーカー向け部品などを手がけ、2010年の設立以来、着実に信頼を築いてきた。
同社では、長年悩まされてきた鳩や九官鳥などによる被害に対し、「鷹匠」による駆除対策を導入し、劇的な成果を上げた。主力製品であるエアクリーナーや各種フィルターにとって、鳥の糞や羽は重大なリスクとなる。中でもエンジンに直結するパーツに異物が混入することは、製品の信頼性に直結する問題であり、衛生管理の徹底が求められていた。
2016年に現在の工場に移転して以来、鳩の定着が始まり、最盛期には30羽以上が常駐。糞害、羽根、騒音といったトラブルが続いた。これまでにも忌避剤の設置やネットによる侵入防止策など複数の手段を講じてきたが、鳩の帰巣本能の前には効果が長続きせず、根本的な解決には至らなかった。
そんな中、2024年春に参加したピントン工業団地の定例会で、別企業から紹介されたのが、カズサタイランドによる「鷹匠」を用いた鳥害対策だった。
鷹は鳥類にとって天敵であり、特に鳩やカラスに対して圧倒的な威圧感を与える。その本能的な恐怖を利用し、鷹を実際に飛ばして脅威を体感させることで、その場所を「危険な環境」と認識させるという仕組みだ。
カズサによる駆除作業は2024年後期に実施。まずは、鳩の巣を駆除。そして5日間にわたって工場とその周辺で鷹を飛ばし、あわせてエアガンや人の手による直接的な駆除も行った。
その結果、推定50羽いた鳩のうち、97%以上の個体が一掃されるという成果があがった。帰巣の要因となっていた巣も徹底的に取り除いたため、その後は鳩が戻ることもなく、工場内は清潔な状態を保っている。
▼駆除作業の様子
ヤマトフィルターの大澤氏は、「予想以上の結果だった。今後は新規侵入への警戒のみで済むようになり、大きな安心を得た」と高く評価している。何より日本人が運営するカズサタイランドが入ることで、文化的な理解や品質面での安心感があるという点も導入を後押しした。
同社による鷹匠サービスはタイ国内で既に10件以上の実績を持ち、25,000㎡規模の工場を定期的に巡回して駆除する顧客もあるという。自然界の生態系を応用し、薬剤もネットも使わずに景観を損なわないこの方法は、環境にも配慮された新しい鳥害対策として、今後さらに注目を集めていくだろう。